介護保険制度の住宅改修とは

2000年より介護保険制度が施工され、施設系、在宅系のサービスが提供開始となりました。通所系サービスや訪問系サービスなどケアマネジャーの計画(ケアプラン)に沿って限度額内でサービスを受けられることができるようになりました。福祉用具においては、貸与(レンタル)できたり購入することができます。

少し変わったサービスといえば、住宅改修となります。申請方法から工事の流れが、他のサービスと異なるので具体的に説明していきます。

目 次

介護保険で対象となる工事

  1. 手すりの取り付け
  2. 段差の解消
  3. 滑りの防止及び移動の円滑化等のための床または道路面の材料の変更
  4. 引き戸等への扉の取り替え
  5. 洋式便器等への取り替え
  6. その他上記に付帯して必要となる住宅改修

申請から介護保険適用になるまでの流れ

  • 支給対象者
  • 住宅改修費支給額
  • 改修費の支給方法
  • 必要書類

介護保険で対象となる工事

一般的な工事のイメージは手すりの取り付けやスロープ工事のイメージがありますが、それ以外にも工事の対象箇所があるのでご紹介していきます。

1.手すりの取付け

転倒予防や段差の乗り越えの時に手すりを使うと安全に移動することができます。縦手すりは、段差を昇降する時に、横手すりは手を滑らしながら移動するときに有効です。他にも、トイレや浴室で使用するL字型の手すりや、波打った手すりなど数多くの手すりの形状があります。

材質も木製であったり、鉄パイプに被膜を巻いたものなどたくさんあります。たまにホームセンターのステンレスパイプを設置されているところもありますが、特に冬場は手すりが冷たくなるので材質選びもしっかり行いましょう。

2.段差の解消

今では、バリアフリーという言葉が定着してきて、廊下とリビングなどの居室の床段差はなくなってきましたが、玄関には15㎝~30㎝の段差があります。少し前の住宅だと廊下と居間の間に1㎝~3㎝程度の段差があります。1㎝の段差でも高齢になるとつまづいてしまい転倒の危険性があります。

段差の解消には床段差を解消して床面をフラットにする方法や、ミニスロープなどを設置して、車いすや歩行器を使っての屋内移動を補助する工事もあります。

お風呂場にも段差があります。これは、洗い場の水が脱衣場に流れないように段差を付けていることが多いようです。浴室の床段差をコンクリートなどで嵩上げする場合は、浴槽の高さにも影響がでます。また、グレーチングなどを埋めて脱衣場に水が流れ込まない工夫も必要です。

浴室の嵩上げをした場合は、浴槽の高さ(外側)が低くなる半面、浴槽の深さ(内側)が深くなるので気を付けてください。

すのこなどを使って簡易的に床の嵩上げもできますが、住宅改修ではなく福祉用具購入となります。

3.滑りの防止及び移動の円滑化等のための床又は通路面の材料の変更

滑りやすい床材から滑りにくい床材に帰る工事です。畳の部屋だと車いすの駆動がしずらくなります。これは、車いすのタイヤが畳に埋め込んでしまうからです。畳からフロア材などに変更することによって、移動を円滑にしてくれます。

浴室でも、段差の解消に加え、滑りにくい材質の床材に変更することがあります。

4.引き戸等への扉の取り替え

開き戸の扉を引き戸や、折り戸、アコーディオンカーテンに変更する工事です。開き戸だと、ドアノブをひねってから、一歩後退して扉を開ける動作が必要となります。後方に下がる動作時に転倒することも想定することができます。

構造によっては取り付けができない場所もありますので、必ず専門家に相談しましょう。

5.洋式便器等への便器の取り替え

和式トイレから洋式トイレに変更する工事です。和式トイレはしゃがんだり立ち上がったりするのが不安定ですよね。洋式トイレに変更することで立ち座りの負担を軽減します。この時に手すりもセットで取り付けることもできます。

和式便器に被せて洋式便器にする福祉用具もありますが、こちらは福祉用具購入の対象品となってます。また、汲み取り式の便槽から浄化槽への変更には介護保険の適用外ですので、各自治体の浄化槽設置整備事業補助金などをご活用ください。

6.その他、前記の住宅改修に付帯して必要となる住宅改修

上記5項目の工事を行う上で付帯として出てくる工事になります。手すり取り付けに伴う下地補強、浴室床段差解消や洋式便器への取り替えに伴う給排水設備工事などがあります。

申請から介護保険適用になるまでの流れ

支給対象者

住宅改修の支給対象者は介護保険で要支援1~2、要介護1~5という何らなかの認定を受けていれば対象となります。当然ながら、住民票がその市町村になければなりません。例えば、他の居住区で息子の家に遊びに来たという状態では工事の対象とはならないので気を付けましょう。

また、入院や介護保険3施設(介護療養病床、介護老人保健施設:老健、介護福祉施設:特養)にいる方は住宅改修を利用することができません。ただし、退院日や在宅復帰日が決まってる場合は、退院前に改修することができます。

住宅改修支給額

一人当たり20万円が支給額となります。他のサービスは月額で費用が決まっていますが、住宅改修について生涯での支給が20万円となっています。工事によっては1回で使い切ってしまうこともありますが、複数回に分けて改修工事を行うこともできます。

支給額が20万円と記載しましたが、実際には所得に応じて1割から3割の自己負担があるため、実際には18万円から14万円までの支給となります。

例外的に介護度が3段階上がった場合や転居(新築除く)した場合に申請をすれば、支給可能額がリセットされて、新たに20万円使えるようになります。

改修費の支給方法

支払い方法には、償還払いと受領委任払いという2つの方法があります。

償還払いは、工事完了後に工事費を施工業者へ支払い、領収書を申請書に添付して、後日、市町村から支給限度額に応じた費用が直接、お客様の指定口座に振り込まれます。

受領委任払いは、最初から支給限度額の1割~3割を施工業者に支払い、業者が市町村へ申請する方法です。

必要書類

介護保険の住宅改修には、改修前と改修後に書類を市町村に提出します。

改修前(事前申請)

  • 住宅改修費支給申請書
  • 住宅改修が必要な理由書
  • 工事費見積書
  • 住宅改修箇所の完成がわかるイメージ図や図面

改修後(事後申請)

  • 住宅改修に要した領収書
  • 工事費内訳書
  • 住宅改修を行った箇所の写真

上記書類については、担当されるケアマネジャーや弊社で準備いたします。

最後に…。

介護保険制度での住宅改修はとても有効なサービスです。自宅での生活を少しでも長くするためには、身体状況の変化があれば、住環境も少しずつ変えていく必要があります。そのためにはリフォーム業者に頼むのではなく、担当のケアマネジャーや福祉用具専門相談員が所属している企業に相談してみてください。

私たちは、不必要な手すりは設置しません。必要なところに必要なサービスの提供こそが介護保険を有効に活用することだと考えています。